【ベルギー・アルデンヌ地方 12月8日】
欧州西部戦線で、本日未明から ドイツ軍がアルデンヌ地方において連合軍に対する大規模攻勢を開始 した。薄い戦力配置となっていた米軍を中心とする前線部隊を急襲し、激しい戦闘が続いている。この攻勢は後に「バルジの戦い」として知られることになるが、現地ではまだ戦況が急速に変転し、各地で混乱が広がっている。
攻勢は未明の濃霧の中で始まった。装甲師団を含む多数のドイツ部隊が森林地帯から一斉に進撃し、米軍側の前線を突破。天候不良で連合軍航空隊の活動が制限されたことも相まって、米軍は一部で後退を余儀なくされている。前線からの通信は断続的で、複数の部隊が包囲の危険にさらされているとの情報も入る。
連合軍司令部は急ぎ部隊の再編成を指示し、増援部隊の移動を開始。英軍の一部も支援に向けられる予定で、ある米軍高官は「敵は戦力を一点に集中して突破を狙っている。持ちこたえれば反撃の機会は必ず訪れる」と語った。しかし、現地の将兵は予想外の攻勢に驚きを隠せず、ある兵士は「霧の中から突然戦車の音が聞こえた」と当時の混乱を述懐した。
ドイツ軍は、厳しい戦局を打開するため西部戦線での主導権奪回を狙っているとみられ、特に補給拠点アントワープの奪取が最終目標と推測されている。一方で連合軍側は人的・物的優勢を保持しており、長期的には反転攻勢も視野に入れている。軍事専門家は「今回の攻勢はドイツ軍にとって最後の大規模反撃の可能性が高い」と指摘し、戦況の行方に注目が集まる。
ベルギーやルクセンブルクの前線地域では住民の避難が続き、寒さ厳しい冬の中で不安が広がっている。補給線は混乱し、市街地では通信の途絶や燃料不足も報告されている。
アルデンヌで始まったこの攻勢は、欧州戦線の年末に突然の激震をもたらし、今後数週間にわたり戦局を大きく揺るがすことが確実視される。
— RekisyNews 国際面 【1944年】
