カレー包囲戦、英軍が港湾封鎖 干潟と運河に囲む長期戦の構え

 【北仏・カレー前面 9月4日】

クレシーの勝利から間を置かず、エドワード3世率いる英軍は海に臨む要港カレーの攻略に着手した。上陸点からの道筋を確保すると、城下を取り巻く干潟と運河、堤道の要所に木柵と築地を連ね、陣営は半円を描いて市壁へ迫る。補給は艦隊のコグ船が担い、入江の口には武装船を並べて出入りを封じた。投石機と大弩が前線へ引き出され、城内へ向けて試射が始まっている。

城方は門前の空き地を焼き払い、堀を深くして橋板を撤去。潮の満ち引きを見計らい、斥候と小舟で外海と連絡を試みる。市参事会は穀物と塩漬肉の配分表を作り、職人と市民を持ち場へ割り付けた。鐘楼では見張りが交代で鐘を握り、狼煙の合図と鐘の回数で門内の応援を呼ぶ体制だ。

英軍は野戦築城を押し進める一方、遠来の傭兵弩兵と長弓兵を混ぜて前哨戦を繰り返し、城壁の弱点と射程の死角を洗い出す。湿地では馬の機動が利かず、土橋の争奪が鍵となるため、工兵が夜通しで土嚢を積む。陣中では疫病と腐敗を避けるため屎尿の溝と屠場の区分が定められ、長期戦の覚悟が透ける。

王都方面からは、仏王フィリップ6世が救援軍を糾合中との報。英側は包囲輪の外側にも望楼を立て、背後奇襲に備える。港と陸路を同時に塞ぎ、飢えと疲弊で開城を迫るのが王の腹づもりだが、秋風と疫病、嵐がどちらに味方するかは予断を許さない。北海の潮が変わるたび、城上の旗と沖の帆が懸命に風を探っている。

— RekisyNews 国際・戦況面 【1346年】

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