【北ホラント州デン・ヘルダー沖 8月30日】
本日午前、オランダ・バタヴィア共和国海軍の戦隊が、イギリス海軍との交戦を避け、北ホラント州フリーテル沖にて降伏した。戦隊を率いていたサミュエル・ストーリー少将は、数的劣勢と兵士の士気低下を理由に挙げており、実戦を経ずに艦隊を引き渡すという異例の決断となった。
現地時間早朝、イギリス艦隊は北海を北上し、約150隻の輸送船団とともにデン・ヘルダー付近へ進出。イギリス軍はバタヴィア軍に投降を促す信号を送ったが、ストーリー少将は約4,000人の将兵とともに抵抗を断念した。現場では、停戦旗を掲げたオランダ艦が静かに碇を下ろす様子が確認され、戦闘による被害は一切なかった。
背景には、フランス革命後に成立したバタヴィア共和国の動揺と、イギリスの北海制海権拡大がある。フランスと同盟関係にあるバタヴィア政府は、イギリス軍の上陸を防ぐためストーリー艦隊を派遣したが、兵士の中にはオレンジ党支持者(旧オランダ総督派)も多く、士気は低下。内部不一致が降伏を早めたとの見方が強い。
ロンドンの海軍省は「無血での戦略的勝利」と発表し、オランダ側の指揮系統の混乱を指摘した。一方、アムステルダムでは政府批判の声が高まりつつあり、艦隊を失った軍事的打撃と国内の分裂が深刻化する恐れがある。
北海の潮風が吹き抜けるフリーテル沖では、戦わずして勝敗が決した。欧州で拡大する英仏対立の渦中、オランダの立場は一層揺らぎつつある。
— RekisyNews 国際・軍事面 【1799年】