【ガダルカナル島・イル川流域 8月21日】
未明、島東岸のイル川下流で両軍が激突した。渡河を図る部隊が砂州に突進し、対岸の陣地は照明弾と機関銃、迫撃砲で応射。熱帯の闇は閃光で裂け、川面に水柱が立った。前衛は倒れつつも再度の突撃を重ね、橋頭の確保をめぐり白兵が繰り返された。
守る側は川沿いに射界を重ね、鉄条網と塹壕を組み合わせた防備で進路を狭めた。潮の満ち引きが歩度を乱し、渡河中の隊列に横射が集中。背後からの支援は密林の小径に阻まれ、弾薬運搬が難航した。
薄明のころ、川口の砂州に沿って軽戦車と歩兵が押し出し、反撃が開始される。火点の制圧と包囲の動きが進むと、渡河側は上流へ退きつつ散開。両岸には壊れた装具と担架が並び、衛生兵の呼び声が響いた。
今回の攻撃は、滑走路の防衛線に直結する。川を越えられれば平地へ抜ける道が開くが、河口を押さえられれば補給路は細る。日中は上空の偵察と砲の調整が続く見込みで、夜陰に乗じた再攻撃への警戒も解けない。
密林と湿地、潮と光 -地形と時間が味方を分ける前線は、なお緊張が極まる。島の行方を左右する渡河点の主導権を握るのはどちらか、次の一夜が試されることになりそうだ。
— RekisyNews 国際・戦況面 【1942年】