瀬田川で決戦 大海人皇子方と近江宮の兵が衝突

 【近江・瀬田川 8月20日】

本日、瀬田川の渡河点一帯で、大海人皇子に従う東国勢と、近江大津の宮廷に属する軍が大規模に衝突した。川沿いの狭隘な地形と橋の出入り口が要となり、夜明けから矢が飛び交い、両軍はたびたび白兵に及んだ。

近江方は橋頭を固め、川面にも小船を配して前進を阻止。これに対し東国勢は上流側の浅瀬への回り込みと、橋正面での強襲を併用し、工兵が杭と楯で仮の防壁を築いて足場を確保した。日中の潮目を挟んで攻防は拮抗し、川岸は折れた槍と盾で埋まった。

午後、東国勢が上流の渡河に成功して側面を圧し、同時に橋上からの突撃を重ねると、近江方の一角が崩落。旗指物が次々と倒れ、太鼓の合図も乱れて退きの声が広がった。橋頭の倉庫や舟は炎上し、黒煙が川風に流れた。

敗走は無秩序ではないものの、近江方は大津方面へ後退し再編の構え。市中では急ぎ城柵の補強と兵糧の積み増しが進み、社寺では勝利祈願の太鼓が鳴る。沿道には避難の荷車が連なり、川辺では負傷者の手当てが続く。

今回の渡河突破で、東国勢は湖東から京畿への通路を押さえた形となる。主導権は野に移り、政権の座をめぐる攻勢は一段と加速する見込みだ。

川面に残る破片と焦げ跡は、短時間に凝縮された激闘を物語る。国の帰趨を左右しかねない次の一戦は、大津の門前で行われるのか。両陣営の次の手に注目が集まっている。

— RekisyNews 政治・戦況面 【672年】

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