東ローマ軍、トラヤヌスの門で大敗 ブルガリア軍が奇襲成功

 【バルカン山脈前線 8月17日】

本日、トラヤヌスの門と呼ばれる山岳の隘路において、東ローマ帝国軍がブルガリア軍との戦闘で大敗を喫した。帝国軍は皇帝バシレイオス2世自らが率いる遠征軍であったが、補給路を断たれ、狭隘な地形を利用した敵の奇襲を受けて総崩れとなった。

今回の遠征は、バルカン半島北部に勢力を拡大するブルガリアの圧力を抑えるために企図された。皇帝自ら陣頭に立ったことで、兵士の士気は高く、首都コンスタンティノポリスでも「若き皇帝の勝利」を信じる声が強かった。しかし、険しい山岳地帯に進軍するにつれ、補給の遅れと道中の疲弊が表面化。現地の住民もブルガリア側に協力し、帝国軍の進路は度々妨害された。

戦闘は今朝、ブルガリア軍が密林と谷間に潜んで突如襲撃したことから始まった。狭い道に押し込まれた帝国兵は隊列を整えることができず、混乱の中で次々に討たれた。弓矢や投石により後方からも攻撃を受け、退却路は封鎖された。証言によれば「叫び声と血煙が谷を満たし、誰が味方かも見分けがつかぬ惨状」であったという。

皇帝自身は近衛兵に守られて辛くも脱出したが、軍は壊滅状態。大量の兵士が戦死、捕虜も数多く出たとされる。ブルガリア側は勝利を高らかに宣言し、各地の城塞にも影響が及ぶ可能性が高い。

首都に伝えられた敗報は衝撃をもって受け止められており、皇帝の権威は大きく揺らぐと見られる。市民の一人は「帝国の若き指導者にとって試練の時が訪れた」と語り、重臣の間でも今後の軍事方針を巡る議論が避けられない。

— RekisyNews 国際・戦況面 【986年】

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