【ロサンゼルス 2月25日】
真珠湾の衝撃冷めやらぬ太平洋沿岸で本日、歴史に類を見ない「空想の激突」が発生した。未明のサンタモニカ上空に正体不明の飛行物体が現れたとの通報を受け、米軍が即座に日本軍機による空襲と断定。ロサンゼルス全域に全市停電(ブラックアウト)が敷かれる中、午前3時過ぎから1時間以上にわたり数千発の対空砲火が打ち上げられた。いわゆる「ロサンゼルスの戦い」と呼ばれるこの異常事態は、本土攻撃への過敏な恐怖が生んだ巨いなる混乱である。
今回の混乱の背景には、数日前にサンタバーバラ近郊で発生した日本海軍潜水艦による伊号第十七潜水艦の砲撃事件がある。本土が直接狙われたという事実が、軍と市民の神経を盤石なまでに尖らせていた。第4連隊の対空砲は、サーチライトが捉えた雲の影や観測用気球を敵機と誤認し、夜空を無数の火花で埋め尽くした。第二次世界大戦という極限状態において、レーダー技術の未熟さと集団的な心理パニックが、実体のない敵との「空中戦」を作り出したのである。
現場となったロサンゼルス市街地では、降り注ぐ砲弾の破片により家屋や車両が損壊し、住民は防空壕へ避難。混乱の最中、心臓麻痺や交通事故により5名の死者が報告されている。ある目撃者は「サーチライトの中に、銀色の光る円盤のようなものが見えた。軍は必死に撃ち落とそうとしていたが、何も墜落してはこなかった」と、震える声で当時の混乱を語った。
静寂を取り戻した西海岸に、日本軍機の残骸は一つとして見当たらない。過剰な防衛本能が引き起こしたこの「幻の空襲」は、戦時下の国民が抱く目に見えない恐怖の深さを、硝煙の臭いと共に突きつけている。
— RekisyNews 戦報 【1942年】
