【トゥーロン沖 2月22日】
本日午前、南仏トゥーロン沖において、スペインの護送船団を阻止せんとするトマス・マシューズ提督率いる英国地中海艦隊と、これを迎え撃つスペイン・フランス連合艦隊が激突。数日間にわたる激闘の火蓋が切られた。このトゥーロンの海戦は、海上封鎖を試みる英国の制海権に対し、新大陸との連絡線を維持しようとするスペイン側が断固たる抵抗を示したものであり、今後の戦局を左右する重大な局面として注目されている。
今回の海戦の背景には、ハプスブルク家の家督継承を巡る列強の複雑な利害対立がある。英国はマリア・テレジアを支持し、スペインおよびフランスの動向を封じ込めるべく、トゥーロン港に集結した敵艦隊の監視を続けていた。対するスペイン艦隊は、イタリア戦線への兵員補給を完遂するため、フランス艦隊の支援を受けて強行突破を画策。戦列艦同士が舷々相摩す距離で砲火を交わす戦列航行の戦術が展開される中、英国側は指揮官同士の不和や通信の混乱により、優勢な戦力を活かしきれないという致命的な弱点を露呈した。
戦場となったトゥーロン沖の海面は、何百門もの大砲が放つ轟音と白煙に包まれ、視界は極めて劣悪な状態にある。海風に乗って火薬の焦げた臭いが漂う中、マシューズ提督の旗艦「ナムール」が先陣を切って突入するも、後続の艦艇との連携が乱れ、孤立を余儀なくされる場面も見られた。対するスペイン艦隊は、痛手を負いながらも整然とした砲撃を維持し、英国側の包囲網を力強く押し返している。波間に浮かぶマストの破片や、荒れ狂う波を切り裂く戦列艦の雄姿は、まさに絶対王政時代の威信をかけた壮絶な光景そのものである。
このスペイン側の粘り強い抵抗が、英国による地中海の完全封鎖を打ち砕き、ブルボン家による南欧での軍事行動をさらに有利に進めるのではないかとの見方もある。また、英国海軍内部における指揮系統の不備が露呈したことで、軍事裁判を含む組織の抜本的な再編が促されるのではないかとの指摘もなされている。海に沈む夕陽が明日への戦いを予感させる中、この大西洋へ続く重要な航路の支配権がいかなる勢力の手に渡るのか、欧州各国の王宮が固唾を呑んで注視している。
— RekisyNews 戦報 【1744年】
