【ダーダネルス海峡 2月19日】
エーゲ海に面するダーダネルス海峡の入口で本日、英仏艦隊が沿岸砲台に対し長距離の砲撃を開始した。海峡両岸に築かれたオスマン帝国の要塞群は直ちに反撃し、砲煙は冬の冷たい風に押し流されながらも海面へ低く垂れこめた。欧州と小アジアを隔てるこの細い水路は、古来より都コンスタンチノープルへ通じる要衝であり、今日の一斉射は今後の大きな作戦の端緒と見られている。
現場では、艦砲の轟音が断続し、岸の崖地には土煙が上がった。砲撃は外郭の砲座と通信施設を狙ったとされるが、要塞側は機動砲と機雷原を背景に沈着に応戦している模様だ。海峡内へ深入りすれば機雷掃海が不可欠となり、艦隊の行動は潮流と狭隘な水路に制約される。英側は航空偵察で着弾観測を試みたとの情報もある。
都では海路の緊張が高まり、軍用・商用の船舶は動静を見守っている。関係筋は、海峡を制することが黒海方面との連絡を左右し、さらにスエズ運河から中東にかけての防備にも波及しかねないと語る。作戦が海上の力のみで成就するか、あるいは陸上兵力の投入を要するかは、今後の攻防の帰結に懸かる。
一方、沿岸の村落では住民が家財をまとめて内陸へ避難し、漁船は浜へ引き上げられた。軍当局は警戒を強め、ガリポリ半島周辺の陣地にも動員が進むという。海峡の開閉は周辺諸国の補給路にも関わり、戦局の帰趨に影響を及ぼす可能性がある。
— RekisyNews 国際面 【1915年】
