【名古屋 3月12日】
本日未明、わが国屈指の工業都市・名古屋市が米軍によるかつてない規模の空襲を受けた。去る10日の東京大空襲に続き、敵軍は再び超空洞要塞B-29を大量投入。投下された無数の焼夷弾により、名古屋駅周辺を含む市街地北西部は一夜にして焦土と化した。
中部軍管区司令部の発表によると、来襲した敵機は約300機。高度2000メートル前後の低空から、木造住宅の密集する地域を狙い撃つようにM69焼夷弾を投下した。火の手は強風に煽られて拡大し、避難路を遮断された多くの市民が巻き込まれたもようである。
名古屋は、零戦などを製造する三菱重工業の大拠点を擁する「空の要塞」とも言える都市である。米軍は今回、工場そのものへの精密爆撃ではなく、そこで働く人々が暮らす市街地全体を焼き払うことで、生産能力の完全壊滅を狙ったものと見られる。焼失した家屋は約4万戸にのぼり、伝統ある名古屋城に近い地域も甚大な被害を受けている。
市内では、警防団や女子挺身隊が決死の消火作業にあたっているが、降り注ぐ火の雨の前に術なく、街は黒煙に覆われている。空襲後、焼け跡に佇む市民の一人は「東京の惨劇が対岸の火事ではなかった」と語り、次なる空爆への恐怖を滲ませた。
連日の大都市攻撃は、わが国の戦時体制に深刻な打撃を与えている。政府は「本土決戦」を叫び国民の結束を促しているが、空から降り注ぐ「物理的破壊」の連鎖を食い止める手段は、依然として乏しいのが現状である。
— RekisyNews 社会面 【1945年】
