【パリ 3月12日】
本日夜、パリ・オペラ座において、新作バレエ『ラ・シルフィード』が初演された。幕が上がると同時に、聴衆はそれまで目にしたことのない、あまりに幻想的で優美な光景に息を呑んだ。主演のマリー・タリアーニ氏が演じる空気の精(シルフィード)は、まさに重力を無視して舞台上を浮遊しているかのようであった。
最大の見どころは、タリアーニ氏が披露した驚異的な技法「ポワント」である。彼女は、繻子の靴の爪先だけで立ち、細かく震えるようなステップで舞台を横切った。これまでのバレエに見られた力強い跳躍とは異なり、その姿は床に触れていることさえ疑わせるほど軽やかで、観客は本物の妖精がそこにいると錯覚した。
物語は、スコットランドの青年ジェームズが、結婚を控えながらも美しい森の妖精に魅了され、破滅へと向かう悲劇を描いている。タリアーニ氏が身にまとった、ふわりと広がる白い薄衣(ロマンティック・チュチュ)は、ガス灯の淡い光を受けて神秘的に輝き、ロマン派芸術が目指す「現実離れした理想の美」を見事に具現化していた。
振付を担当した父フィリッポ氏は、娘の並外れた柔軟性とバランス感覚を活かし、人間離れした動きを追求したという。終演後の拍手は鳴り止まず、評論家たちは「バレエは今日、新たな時代を迎えた」と口を揃えた。この『ラ・シルフィード』の成功により、今後、ヨーロッパ中の劇場がこの「白いバレエ」の虜になることは間違いないだろう。
— RekisyNews 文化面 【1832年】
