【東京・羽田 3月12日】
本日午後、フィリピンのルバング島で戦後29年間にわたり任務を継続していた小野田寛郎元陸軍少尉(51)が、特別機で羽田空港に到着した。軍帽を被り、背筋を正してタラップを降り立った小野田氏は、出迎えた両親と30年ぶりの再会を果たし、集まった大勢の報道陣と国民に対し、毅然とした態度で帰還を報告した。
小野田氏は1944年、陸軍中野学校二俣分校でゲリラ戦の訓練を受けた後、ルバング島に派遣された。「死ぬことは許されない」という上官の命令を忠実に守り、終戦後もなお、島内のジャングルに潜伏。共に潜伏していた仲間を失いながらも、たった一人で「戦争」を戦い続けてきた。
帰還のきっかけは、先月、冒険家の鈴木紀夫氏が島内で小野田氏と接触したことだった。小野田氏は「上官の命令がなければ投降できない」と主張。これを受け、かつての上官である谷口元少佐が現地へ赴き、正式な「任務解除命令」を読み上げたことで、ようやく彼の戦争は終わりを告げた。
空港で小野田氏は「生きて日本に戻れたことを、夢のように感じます」と述べ、凛とした立ち振る舞いを見せた。しかし、高度経済成長を経て大きく変貌した現在の日本に対し、彼がどのような感慨を抱くのか。戦後という時間の重みを突きつける一人の兵士の帰還に、日本中は深い感動と戸惑いが入り混じった熱狂に包まれている。
— RekisyNews 社会面 【1974年】
