【東京 3月11日】
本日、アニメーション映画界に新たな伝説を刻む一作、宮崎駿監督の『風の谷のナウシカ』が全国の劇場で公開された。徳間書店発行の雑誌『アニメージュ』に連載中の自作漫画を映画化した本作は、これまでの「子供向けアニメ」の枠を大きく踏み出した、哲学的な深みを持つ叙事詩として観客の心を捉えている。
舞台は、高度な産業文明が「火の七日間」と呼ばれる最終戦争で崩壊してから1000年後。巨大な蟲(むし)が住み、有毒な胞子を振りまく森「腐海(ふかい)」に飲み込まれつつある黄昏の世界だ。風を読み、メーヴェを駆る少女ナウシカは、絶滅の危機に瀕した人類と、荒ぶる自然との狭間で、真の共生への道を模索する。
公開初日の劇場前には、緻密な世界観と圧倒的な作画クオリティを期待する若者やアニメファンが長蛇の列を作った。特に、久石譲氏が手がける幻想的な音楽に乗せて描かれる、巨大な王蟲(オーム)の暴走シーンや伝説の「巨神兵」の威容は、観客に息を呑ませるほどの迫力だ。
環境破壊への痛烈な風刺を内包しつつも、エンターテインメントとしての高揚感を失わない本作。この成功は、制作に携わったスタッフらが抱く「真に大人の鑑賞に堪えうるアニメーション」への確信を裏付けるものとなった。本日、銀幕に舞い上がったナウシカの姿は、日本アニメーションの未来を大きく変える「青き清浄の風」となるに違いない。
— RekisyNews 文化面 【1984年】
