「野の鳥は野に」日本野鳥の会誕生 ── 中西悟堂氏ら、自然愛護の旗揚げ

【東京 3月11日】

本日、神田の学士会館において、わが国初の本格的な野鳥保護団体「日本野鳥の会」の創立総会が執り行われた。発起人代表の歌人・中西悟堂氏を中心に、文学、科学、教育の各界から多くの有志が集結。鳥を籠に閉じ込めたり、銃で追ったりするのではなく、あるがままの姿を愛で、守るという高潔な運動がいよいよ産声を上げた。

これまでわが国では、鳥と言えば「猟」や「鳥刺し」といった実利の対象か、あるいは「飼鳥」としての関心が主であった。しかし中西氏は、大自然の中で自由に飛翔する姿こそが真の美しさであると主張。「野鳥(やちょう)」という言葉に、自然への敬意と科学的な観察眼を込め、広く一般にその愛護を呼びかけている。

創立メンバーには、詩人の北原白秋氏や民俗学者の柳田國男氏ら、当代を代表する文化人が名を連ねている。彼らは、急速な近代化によって失われつつある日本の原風景と、そこに息づく命の尊さを再発見する重要性を説いた。中西氏は「一羽の鳥を知ることは、宇宙を知ることである」と説き、今後の活動として、定期的な「探鳥会(たんちょうかい)」の開催や、会報の発行を予定している。

本日の一歩は、単なる趣味の集まりではない。日本人が自然とどう向き合うべきかという、精神文化における大きな転換点となるだろう。学士会館に集った人々の熱気は、やがて全国へと広がり、わが国の緑豊かな自然を守る大きな力となることが期待されている。

— RekisyNews 文化面 【1934年】

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