国家の富は「労働」にあり ── アダム・スミス氏、大著『国富論』を出版

【ロンドン 3月9日】

本日、ロンドンの出版界に激震が走った。スコットランド出身の道徳哲学者アダム・スミス氏が、10年以上の歳月を投じて執筆した全5編の大著『国富論』が遂に刊行されたのだ。本書は、国家が富を蓄えるためのこれまでの常識を根底から覆すものであり、知識人や政治家の間で早くも熱烈な議論を巻き起こしている。

スミス氏は本書の冒頭で、国家の富の源泉は金銀の保有量ではなく、国民の「年々の労働」によって生産される消費物であると定義した。特に、ピンの製造を例に挙げた「分業」の分析は圧巻だ。一人の職人が全工程を行うよりも、作業を細分化することで、一人当たりの生産能力が数百倍にも向上する事実を論理的に証明してみせた。

さらに、市場における自由競争の重要性を説く中で、個々人が自らの利益を最大化しようと行動することが、あたかも「見えざる手」に導かれるかのように、意図せずとも社会全体の繁栄をもたらすと主張。政府による不自然な介入や特権的な独占を「資源の誤った配分を招く」として鋭く批判している。

現在、英国はアメリカ植民地との緊張状態にあるが、スミス氏は重商主義に基づく植民地維持のコストについても冷徹な分析を加えている。産業革命の足音が聞こえ始めた今、本書は単なる理論書にとどまらず、新たな時代の経済秩序を形作る「物差し」となることは間違いないだろう。

— RekisyNews 経済面 【1776年】

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