【デイトナビーチ 3月8日】
本日、フロリダの白砂の海岸線で、歴史上初となる本格的なストックカーレースが開催された。市販車をベースとした改造車たちが、大西洋の波打ち際と公道を組み合わせた過酷な特設コースに挑み、集まった数千人の観衆を熱狂の渦に巻き込んだ。
レースは、デイトナビーチ南端のポンセ・インレット付近に設けられた1周3.2マイルの周回コースで実施された。最大の見どころは、約2マイルにわたる硬い砂浜の直線区間だ。ドライバーたちは潮風を受けながら全開で疾走し、鋭いカーブを経て舗装されたハイウェイへと駆け上がる。
激戦を制し、初代王者の座に輝いたのはフォードV-8を操ったミルト・マリオン氏。しかし、その勝利への道は決して容易ではなかった。午後になると潮が満ち始め、砂浜の路面は泥濘化。あちこちで砂に足を取られて立ち往生する車両が続出し、レースは予定の距離を待たずして、満潮の影響により75周での終了を余儀なくされた。
特筆すべきは、ワシントンD.C.からやってきた整備士、ビル・フランス氏の力走だ。彼は自らハンドルを握り、5位入賞を果たす健闘を見せた。このレースは、かつて禁酒法時代の「密造酒運び」たちがスピードを競い合った文化を、公認の競技へと昇華させたものと言える。
今日のデイトナは、単なる避暑地から「スピードの聖地」へとその姿を変えた。満潮に遮られた未完のレースは、むしろ今後の無限の可能性を予感させている。アメリカのモータースポーツ史に、新しい一ページが刻まれた。
— RekisyNews スポーツ面 【1936年】
