日本橋の老舗「白木屋」が会社化 ── 資本金500万円、近代経営へ舵

【東京 3月7日】

江戸・寛文年間より続く日本橋の至宝、呉服店「白木屋」が本日、個人経営から株式会社組織へと改組し、「株式会社白木屋呉服店」として新たな産声を上げた。資本金は500万円。この老舗の変革は、日本の商業界が伝統的な「店(たな)」の形から、欧米に比肩する近代的な「百貨店(デパートメントストア)」へと進化を加速させていることを象徴している。

白木屋は、近江商人の大村彦太郎氏が1662年に日本橋で創業して以来、越後屋(現・三越)と並び称される江戸屈指の呉服商として繁栄を極めてきた。明治期に入り、すでに洋風建築への建て替えや陳列販売の導入を進めていたが、今回の会社化により、一族経営の枠を超えた資本調達と組織運営が可能となる。初代社長には、中興の祖として知られる十代目大村彦太郎氏が就任した。

日本橋界隈では、先行して株式会社化した三越が華やかな宣伝で客を集めているが、白木屋も今回の法人化を機に、自動車販売部の新設や屋上庭園の整備など、呉服の枠に捉われない多角的な事業展開を計画しているという。「良客を待つのではなく、良客を創る」。そんな近代デパートとしての野心が、新会社の名に込められている。

伝統の暖簾(のれん)を守りつつ、最新の経営手法を取り入れる白木屋の挑戦は、大正デモクラシーの波に乗る消費文化の象徴となるだろう。日本橋の空に掲げられた新しい看板は、日本の小売業に新たな競争と繁栄の時代が到来したことを告げている。

— RekisyNews 経済面 【1919年】

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