大阪・大開町に新星 ── 松下電気器具製作所、本日創業

【大阪 3月7日】

本日、大阪市北区大開町の一軒の借家において、弱冠23歳の青年・松下幸之助氏による「松下電気器具製作所」が産声を上げた。電球ソケットの製造販売を主軸に据えたこの小さな町工場の誕生は、急速に電化が進む日本の家庭生活に新たな光を灯そうとしている。

幸之助氏は、大阪電灯(現・関西電力)を退職後、独自のアイデアによる「新型ソケット」の開発に心血を注いできた。創業メンバーは、幸之助氏本人のほか、妻のむめの氏、そして義弟の井植歳男(いうえ としお)氏のわずか3名。資金も乏しく、当初は家財を質に入れながらの苦しい出発であったが、幸之助氏が考案した「アタッチメント・プラグ」は、既存の製品よりも安価で壊れにくいと、早くも市場で注目を集め始めている。

当時の一般家庭では、天井から吊り下げられた一つの電球ソケットからしか電源が取れず、アイロンなどの電化製品を使うには不便を極めていた。幸之助氏は「人々の暮らしを便利にしたい」という一念から、一つのソケットから二つの電気が取れる「2灯用差し込みプラグ」を量産。この徹底した利用者視点の製品づくりが、大阪の商人の間で「大開町の松下」の名を広める契機となった。

「水道の水のように、良い製品を安く大量に提供し、人々を豊かにしたい」。まだ見ぬ壮大な理想を胸に、青年・松下幸之助は本日、小さな工場を稼働させた。この大開町の熱気は、やがて日本、そして世界を駆け巡る巨大な潮流へと繋がっていくに違いない。

— RekisyNews 産業面 【1918年】

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