【東京 3月2日】
日本の家電メーカー大手、シャープ、松下電器(現パナソニック)、アイワの3社は本日、次世代の録音・再生規格であるデジタルオーディオテープ(DAT)プレーヤーを市場に投入し、一斉に発売を開始した。1982年のCD(コンパクトディスク)登場に続き、ついに「録音メディア」の世界にもフルデジタルの波が押し寄せた。
DATの最大の特徴は、アナログカセットテープの約半分のサイズでありながら、CDと同等以上の高音質を実現している点だ。回転ヘッド方式(R-DAT)を採用することで、微細なデジタル信号を正確に記録。従来のテープで避けられなかった「ヒスノイズ」は皆無となり、ダイナミックレンジは従来の数倍に拡大している。
本日発売された各社の第一弾モデルは、いずれも10万円後半から20万円前後という高級機だ。
- シャープ:独自のLSI技術を投入し、安定した信号処理を実現。
- 松下電器:テクニクスブランドで培った音響技術を詰め込んだ据え置き型デッキ。
- アイワ:録音・再生の忠実度を極限まで高めた高性能モデル。
しかし、この夢のデジタル録音機には大きな影も差している。劣化のない完全なコピーが可能なことから、欧米のレコード業界から「著作権侵害の恐れがある」として激しい反発が起きているのだ。このため、現時点ではCDからデジタル信号のまま直接録音することは制限(サンプリング周波数の違いによる制限)されている。
業界内では、DATがカセットテープに代わる次世代の主役になると期待される一方で、この著作権問題が普及の足かせになることを懸念する声も多い。高精度なメカニズムとデジタル技術が融合した「オーディオの芸術品」が、一般家庭にどこまで浸透するのか、その動向に注目が集まっている。
— RekisyNews 技術・経済面 【1987年】
