【米フロリダ州ケープカナベラル 3月2日】
米航空宇宙局(NASA)は本日、ケープカナベラル空軍基地よりアトラス・セントール・ロケットを用いて、惑星探査機パイオニア10号を打ち上げた。同機は地球の重力を振り切り、時速約5万キロメートルという史上最速のスピードで、太陽系最大の惑星・木星を目指す壮大な旅に漕ぎ出した。
パイオニア10号の最大の任務は、火星と木星の間に横たわる未知の領域「小惑星帯(アステロイドベルト)」を初めて突破することにある。無数の岩石が漂うこの難所を無事に通過できれば、来年12月には木星に最接近し、その強力な放射線帯や大気の組成、磁気圏の謎を解き明かす観測を行う予定だ。
特筆すべきは、この探査機が太陽系外へと飛び出す「人類初の漂流者」となることを想定し、アンテナ支柱の間に金メッキを施したアルミニウム製の金属板(メッセージ・プラーク)が取り付けられている点だ。そこには、人類の姿や地球の位置、太陽系の概念図が刻まれている。もし数億年後の未来、遠い銀河の「知的生命体」がこの機体を回収した際、地球という文明が存在した証拠を伝えるメッセージ・ボトルとしての役割も担っているのだ。
原子力電池を動力源とするパイオニア10号は、木星通過後も太陽系の果てへと加速し続ける。漆黒の宇宙空間へと消えていくこの小さな探査機は、科学の限界に挑むだけでなく、我々人類の知的好奇心と平和への願いを宇宙の彼方へと運び続けることになるだろう。
— RekisyNews 科学面 【1972年】
