【ニューヨーク 8月27日】
米国テニス協会(USTA)は本日、性別適合手術を受けたレネー・リチャーズ医師の今季全米オープン出場を正式に拒否した。同医師は以前、男子テニス界でリチャード・ラシュカインドとして活躍したが、一昨年、女性として生きることを選択。今年に入って女子の大会にも参加し、議論を呼んでいた。
USTAは、拒否の理由として「性別確認のための染色体検査」を要求。これに対し、リチャーズ医師側は「プライバシーの侵害であり、差別的である」として検査を拒否したため、出場資格を満たさないと判断された。この決定は、スポーツ界における「性」の定義をめぐる長年の議論を、一気に白日の下に晒すこととなった。
リチャーズ医師は、この決定に対し「非常に残念で、不当な差別だ」と述べ、法廷闘争も辞さない構えを見せている。弁護団は、全米オープンの予選が行われるウッドデール・カントリークラブに、明日にも入場禁止命令の差し止めを求める訴訟を起こす予定だ。
事態はテニス界全体に波紋を広げている。女子テニス界の重鎮であるビリー・ジーン・キングやクリス・エバートらからは、リチャーズ医師への支持と共感を示す声が上がる一方、一部の選手からは「公平性の問題」を訴える声も聞かれる。また、テニスの四大大会を運営する国際的な組織も、この問題に対し沈黙を守っており、今後の成り行きが注目される。
社会全体で性の多様性への理解が進む中、スポーツ界は依然として揺れている。身体的な差異を前提とするスポーツにおいて、性別適合手術を受けた選手をどのように受け入れるか、という前例のない課題に直面しているのだ。 全米オープンを目前に控え、テニス界の覇権争い以上に、性別をめぐる争いが注目を集めている。この問題は、単なる一選手の出場可否にとどまらず、スポーツの未来、そして社会のあり方を問う、重大な局面を迎えていると言えよう。
— RekisyNews スポーツ・社会 【1976年】