「非常事態」が基本的人権を停止 ── 議事堂放火受け「国民保護大統領令」発令

【ベルリン 2月28日】

ドイツ国大統領パウル・フォン・ヒンデンブルクは本日、アドルフ・ヒトラー首相の発議に基づき、「国民および国家保護のための大統領令」(通称:国会議事堂放火事件布告)を発令した。前夜に発生した国会議事堂放火事件を「共産主義者による暴力革命の予兆」と断定したヒトラー政権は、この政令により、ワイマール憲法が保障してきた基本的人権を無期限に停止する強硬措置に打って出た。

本日の発令により、ドイツ国内における言論、出版、集会の自由は著しく制限され、郵便や電話の秘匿といったプライバシーの権利も剥奪された。さらに、当局は裁判所の令状なしに家宅捜索や逮捕を行う権限を掌握。ベルリン市内ではすでに共産党関係者や政敵に対する一斉検挙が始まっており、街には緊迫した空気が張り詰めている。

ヒトラー首相は、今回の措置について「国家を破壊せんとするテロの脅威から国民を守るための不可避な防衛策である」と強調。政府は今回の放火事件を共産党の犯行と断定し、即座にその活動を非合法化する構えを見せている。しかし、事件からわずか数時間での迅速すぎる布告に対し、一部の野党勢力からは「国民の自由を奪い、政権による独裁を盤石にするための政治的策略ではないか」と危惧する声も上がっている。

ドイツ全土が不安と動揺に包まれる中、法治国家の枠組みは事実上、非常時体制へと移行した。国家の安寧を名目としたこの「強制的同一化」の動きが、ドイツの議会制民主主義にどのような終止符を打つことになるのか。ナチス政権による強権統治の第一歩は、放火の煙とともに冷徹に踏み出された。

— RekisyNews 社会面 【1933年】

アイキャッチ画像 Bundesarchiv, Bild 183-H03823 / CC-BY-SA 3.0, CC BY-SA 3.0 de, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=5363589による

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