【ロンドン 2月26日】
女王陛下も顧客に持つ英国最古の名門投資銀行、ベアリングス銀行が本日、ついに経営破綻に追い込まれた。
200年以上の歴史を誇る名門を崩壊させたのは、シンガポール支店に勤務するわずか28歳の一人の中堅トレーダー、ニック・リーソンによる巨額の投機損失であった。金融界の「タイタニック」とも形容されるこの衝撃的な倒産劇は、リスク管理の不在が招く破滅を、盤石と思われたロンドンの金融街・シティに突きつけた。
今回の破綻の背景には、デリバティブ(金融派生商品)取引の闇に潜む致命的な陥穽がある。リーソンは、日本経済を揺るがした阪神・淡路大震災後の株価動向を見誤り、日経平均先物取引で盤石な損失を隠蔽(いんぺい)しつつ買い支えを続けた。しかし、市場は彼の予測を裏切り続け、損失額は同銀行の自己資本を遥かに上回る約8億6,000万ポンド(約1,300億円)にまで膨れ上がった。銀行上層部は、リーソンが「利益を上げている」という虚偽の報告を信じ込み、内部監査機能を盤石に機能させていなかったことが致命傷となった。
現場となったロンドンのシティでは、名門の最期を信じられないといった様子の銀行員たちが沈痛な面持ちでオフィスを後にしている。一方、リーソン本人は既にシンガポールを脱出しており、国際手配が行われる事態となっている。ある金融アナリストは「これは個人の犯罪であると同時に、巨大な金融機関が抱えるガバナンスの欠如という病理を露呈した事件だ」と、厳しい表情で語った。
英国経済の象徴のひとつが、一兵卒の無謀な賭けによって地図から消える。イングランド銀行による救済措置も断念された今、ベアリングスの崩壊は、世界の金融規制にいかなる「劇薬」を投じ、後のデリバティブ取引のリスク管理をいかに盤石なものへと変貌させていくのか。マンハッタンから丸の内まで、世界のマネーマーケットは今、かつてない戦慄に包まれている。
— RekisyNews 経報 【1995年】
