【ポルトフェッライオ 2月26日】
本日未明、地中海のエルバ島に流刑の身となっていたナポレオン・ボナパルトが、少数の精鋭を伴い同島を脱出した。1年前の退位により盤石と思われたウィーン体制の平和は、この一報により根底から揺らぎ始めている。
今回の脱出の背景には、復活したブルボン朝の失政に対するフランス国民の不満と、連合国間の利害対立を見抜いたナポレオンの鋭い洞察がある。彼は監視の目を潜り抜け、ブリッグ船「インコンスタン号」に乗り込み、一路フランス本土を目指している。これは、一度は崩壊したナポレオン帝国の再興を賭けた、乾坤一擲の賭けである。
現場となったエルバ島の港では、突然の主の失踪に当局が混乱を極めている。一方、フランス本土では、皇帝帰還の噂が風のように広がり、かつての戦友や民衆の間で期待と不安が渦巻いている。ある古参近衛兵は「我々の鷲が再び空を舞う。ルイ18世の治世は終わった」と、興奮を隠せない様子で語った。
海を渡る一隻の船が、再び欧州を戦火と激動の渦に叩き込もうとしている。エルバ島の岩壁を背にしたナポレオンの眼差しは、すでにパリのテュイルリー宮殿を捉えている。
— RekisyNews 戦報 【1815年】
