【江戸 2月26日】
江戸城の奥深く、男子禁制の聖域を揺るがす未曾有の醜聞が浮上した。
大奥の最高権力者である御年寄・絵島(えじま)が本日、人気役者・生島新五郎と密会した疑いがあることが判明。山村座での観劇後に行われたこの宴席は、単なる遊興の域を超え、幕閣を巻き込む一大政争「江島生島事件」へと発展する様相を見せている。
今回の密会の背景には、大奥内の熾烈な権力闘争がある。絵島は、幼君・徳川家継の生母である月光院の盤石な側近として権勢を振るってきた。これを快く思わない先代・家宣の正室である天英院派による「月光院派追い落とし」の策略が、今回のスキャンダルを表面化させたとの見方が強い。絵島が生島らと過ごした時間は、門限を大幅に遅れるという重大な規律違反を伴っており、大奥の法度はここに根底から覆された。
現場となった木挽町の茶屋周辺では、密会に関与したとされる者たちの捕縛が始まっており、江戸市中に緊張が走っている。生島を擁する山村座にも厳しい糾問の目が向けられており、華やかな芝居小屋の裏側で血の粛清を予感させる暗雲が垂れ込めている。ある大奥関係者は「これほどまでの不祥事は前代未聞。絵島様の失脚は避けられず、月光院様の御立場も盤石とは言い難い」と、声を潜めて語った。
ひとつの密会が、大奥のみならず幕府の勢力図を根底から書き換える。絵島という一人の女性が溺れたつかの間の享楽は、数千人の運命を飲み込む巨大な濁流となり、江戸の夜を冷たく染め抜いていくに違いない。
— RekisyNews 時報 【1714年】
