「本物」を欺いた手作り金庫 ── 梅田に消えた2500万円

【大阪 2月25日】

キタの繁華街が驚愕と失笑、そして戦慄に包まれている。本日未明、大阪市大淀区(現・北区)の三和銀行(現・三菱UFJ銀行)梅田支店において、わが国の犯罪史上類を見ない大胆不敵な窃盗事件「大阪ニセ夜間金庫事件」が発生した。犯人は本物の金庫の投入口を巧みに塞ぎ、そのすぐ隣に自作の「偽物」を設置。商売人たちが疑いもなく投入した売上金、約2,500万円をまんまと奪い去った。

事件の背景には、高度経済成長期の現金取引の多さと、銀行への絶対的な信頼を逆手に取った「心理的な隙」がある。犯人が用意した偽の金庫は、ベニヤ板やステンレス板を加工し、塗装を施した精巧なものであった。さらに「故障中。お手数ですが隣の仮金庫へ」というもっともらしい案内板を掲示日曜日という銀行休業日を狙い、集計作業が遅れる時間差を利用した知能犯的犯行である。これは、警備システムを破るのではなく、「システムそのものを偽装する」という新たな手口の出現である。

現場となった銀行の入り口付近には、朝から被害に遭った飲食店主らが集まり、「まさか偽物だとは思わなかった」と呆然とした表情で語っている。ある店主は「作りが本物そっくりで、鍵まで付いていた。銀行の看板がある場所で、誰が疑うというのか」と、怒りを通り越して感心したような苦笑いを浮かべた。大阪府警は大淀署に捜査本部を設置。犯人が残したベニヤ板の木屑や塗料の分析を盤石に進める一方、これほど精巧な工作物を作れる職人や工員を中心に、広範囲な捜査を開始した。

この前代未聞の「ニセ金庫事件」が、全国の金融機関における夜間金庫の保安基準を根底から見直させ、防犯カメラの設置や構造強化を盤石なものにしていくのではないかとの見方もある。また、この「騙しの美学」すら感じさせる手口が、後の模倣犯やセキュリティ神話にいかなる教訓を残すのか。大阪の街から忽然と消えた大金と、一夜にして現れ消えた「偽の箱」の行方が、今まさに鋭く注目される。

— RekisyNews 社会面 【1973年】

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