「無国籍の扇動者」からドイツ国民へ ── ヒトラー、大統領選直前に国籍取得

【ベルリン 2月25日】

国家社会主義ドイツ労働者党(ナチス)の党首アドルフ・ヒトラー(42)が本日、ついにドイツ国籍を取得した。1925年にオーストリア国籍を離脱して以来、約7年間にわたり「無国籍」の状態にあったヒトラーだが、本日付で自由州ブラウンシュヴァイクの州政府公務員(ベルリン駐在公使館員)に任命されたことで、当時の規定に基づき自動的にドイツ市民権を獲得。これにより、来月に迫った大統領選挙への出馬を阻む法的な壁が完全に消滅した。

今回の国籍取得の背景には、野心的な政治活動を続けながらも「外国人」として常に国外追放の危機に晒されてきたヒトラーの焦燥がある。これまでナチス党員らは、彼を教授職や警察署長に任命することで国籍を与えようと画策してきたが、そのたびに「あまりに露骨な政治工作」として各方面からの猛烈な反発に遭い、失敗を繰り返してきた。しかし、ナチスが連立政権に加わるブラウンシュヴァイク州において、内相ディートリヒ・クラゲス氏らが強引にこの「架空の役職」を用意。皮肉にも、官僚組織の隙を突く形で「ドイツ人ヒトラー」が誕生することとなった。

現場となったベルリンのホテル・カイザーホーフでは、宣誓式を終えたヒトラーが、側近たちに対し「これで正式に戦える」と自信に満ちた表情で語ったという。一方で、このなりふり構わぬ国籍取得に対し、共和派の新聞各紙は「公務員の地位を悪用した不正な帰化」と激しく糾弾。ベルリンの街頭では、ヒトラーの出馬を歓迎する支持者の歓喜の声と、急進的な右翼勢力の台頭を危惧する市民の不安な囁きが交錯している。

このヒトラーの国籍取得が、現職ヒンデンブルク大統領との決戦の火蓋を切り、ワイマール共和国の議会制民主主義を根本から揺るがすのではないかとの見方もある。一人の無国籍者が手にした一通の証書が、ドイツ、そして世界の運命をいかなる激動へ押し流していくのか。その歴史的転換点の重みが、今まさに鋭く注目される。

— RekisyNews 政報 【1932年】

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