【ロンドン 2月24日】
欧州を焼き尽くす大戦の火の粉が、ついに大西洋を越えてアメリカ合衆国を直撃しようとしている。駐英アメリカ大使ウォルター・ハインズ・ページは本日、英国政府から「ツィンメルマン電報」と呼ばれる極秘文書を手渡された。これは英国海軍情報部(ルーム40)が傍受・解読したもので、ドイツ帝国がメキシコに対し、対米参戦を条件にテキサス、ニューメキシコ、アリゾナの返還を約束するという驚愕の内容であった。この紙片一枚が、中立を維持してきた合衆国の世論を一変させ、世界大戦の天秤を決定的に揺り動かそうとしている。
電報の背景には、ドイツによる無制限潜水艦作戦の再開と、それに伴う合衆国の参戦を阻止・牽制せんとする外交的策動がある。ドイツ外相アートゥル・ツィンメルマンがメキシコ公使へ宛てたこの指令は、もし合衆国が参戦したならばメキシコを同盟に引き入れ、アメリカの背後を突かせるという大胆不敵な「裏工作」であった。英国側はこの情報を、合衆国を連合国側へ引き入れるための最強のカードとして温存。満を持してページ大使に手渡されたこの「外交的爆弾」は、ウィルソン大統領が掲げる「平和主義」を根底から突き崩す力を持っている。
現場となったロンドンの米大使館の一室は、電報の内容が明かされた瞬間、凍り付いたような静寂に包まれた。ページ大使はその電文を何度も読み返し、ドイツの欺瞞と自国の安全保障に対する直接的な脅威に、震える手で眼鏡を拭ったという。英国の閣僚が「これが真実だ」と断言する傍らで、大使は即座にワシントンへの急報を指示した。ホワイトハウスの平穏な日常の裏側で、一列の数字(暗号)が国家の運命を変える凄まじい緊迫感が、海底ケーブルを通じて大西洋を駆け巡っている。
このツィンメルマン電報の全容が公表されれば、米国内の孤立主義は霧散し、合衆国の参戦が不可避となるのではないかとの見方もある。また、この暗号解読という「見えない戦い」が、現代のインテリジェンス(情報戦)の重要性を盤石なものにし、後の世界戦略にいかなる教訓を残すのか。電文に記された「失われた領土」という言葉が、アメリカ国民の愛国心をいかに燃え上がらせるのか、その行方が鋭く注目される。
— RekisyNews 外報 【1917年】
