【ローマ 2月24日】
キリスト教世界の時間が、本日を境に劇的な修正を加えられることとなった。ローマ教皇グレゴリウス13世は、これまでの「ユリウス暦」に代わる新たな暦法、「グレゴリオ暦」の導入を命じる教皇勅書を発した。長年の天文学的観測の結果、既存の暦と実際の季節の間に生じていた約10日間のズレを解消するこの決定は、教会の権威のみならず、欧州全体の科学的・社会的な秩序を再編する歴史的な大転換となる。
改正の背景には、春分の日が本来の3月21日から大幅に前倒しされ、キリスト教において最も重要な「復活祭(イースター)」の算出が困難になっていた危機感がある。ユリウス暦が128年ごとに1日の誤差を生んでいたのに対し、新暦は400年間に97回の閏年を置くという極めて精密な計算式を採用した。これにより、天体の運行と暦がほぼ完全に一致することとなる。しかし、この修正を適用するため、本年10月には「5日から14日まで」の日付を抹消するという前代未聞の措置が取られる予定であり、庶民の間では「人生の10日間が盗まれる」といった困惑の声も広がっている。
現場となったバチカンの教皇庁では、イエズス会の天文学者クリストファー・クラヴィウスら、今回の改暦を主導した智識人たちが安堵の表情を見せている。配布された新暦の草案には、緻密な数式と天体図が並び、中世的な時間概念を脱却せんとする知の集積が凝縮されている。ある若き司祭は「我々は今日、神が創りたもうた宇宙の真の理に一歩近づいた。時間はもはや単なる慣習ではなく、真理に基づいたものとなる」と、その意義を熱く語った。サン・ピエトロ広場の鐘の音は、「新しい時間」の到来を祝福するかのように、いつもより重厚に響き渡っている。
このグレゴリオ暦の採用が、カトリック諸国からプロテスタント諸国、さらには東方教会へと普及し、「世界共通の標準時」として君臨していくのではないかとの見方もある。また、この精密な時間管理が、後の大航海時代や科学革命における正確な計算と予測の基盤を盤石にするのか。ローマから発信されたこの「一瞬の修正」が、人類の未来をいかなる精度で律し続けていくのか、その行方が鋭く注目される。
— RekisyNews 外報 【1582年】
