「竹槍」が揺るがした大本営 ── 竹槍事件、軍部とマスコミの衝突

【東京 2月23日】

戦局の悪化が深刻化する中、言論の府と軍部が真っ向から対峙する前代未聞の事態が発生した。本日、毎日新聞紙上に掲載された「勝利か滅亡か、戦局は此処まで来た」と題する記事が、陸軍省および東條内閣の激しい怒りを買い、執筆した新名丈夫記者に対し事実上の報復とされる召集令状が下った。この「竹槍事件」は、軍部による徹底した言論統制と、科学を軽視する精神主義的な本土決戦への盲信を浮き彫りにし、戦時下の日本における報道の自由がいかに断崖絶壁に立たされているかを白日の下に晒した。

今回の衝突の背景には、サイパン島などの防衛を巡る、軍部と報道の間の埋めがたい認識の乖離がある。新名記者は記事の中で、敵の圧倒的な航空戦力に対し「竹槍では飛行機に勝てぬ」と現実的な批判を展開。しかし、これは「竹槍による本土決戦」を説く東條首相ら軍部中枢への公然たる反逆と見なされた。陸軍省は直ちに毎日新聞の差し押さえを図るとともに、すでに兵役免除の年齢に近かった新名を狙い撃ちにする形で「懲罰召集」を強行。この強権発動は、国家の命運を分かつ情報の真実性をいかに扱うべきかという深刻な問いを突きつけている。

現場となった竹橋の毎日新聞社内では、憲兵隊の影がちらつく異様な緊張感の中で、記者たちが沈痛な表情を浮かべながらも事態の推移を見守っている。編集局には、軍部からの執拗な抗議電話が鳴り響き、校了間際の紙面を差し替える喧騒と、表現の自由を奪われた者たちの無念の吐息が混じり合っている。ある若手記者は、没収された原稿の束を見つめながら「真実を語ることが非国民とされるのか」と、絞り出すような声で自問を繰り返した。冬の冷え込みが厳しい都心の街頭では、何も知らぬ市民が「竹槍訓練」に勤しんでおり、その光景と報道現場の絶望的な乖離が、時代の歪みを残酷に象徴している。

この竹槍事件による言論弾圧が、さらなる情報の遮断と国民への事実隠蔽を加速させ、国家を破滅的な結末へと突き動かしていくのではないかとの見方もある。批判を許さぬ組織の先鋭化が、合理的な戦略判断の喪失を決定的なものとし、未曾有の悲劇を招くのか。言論という最後の砦が崩れ去ろうとする中、わが国のゆくえに立ち込める暗雲が鋭く注目される。

— RekisyNews 時報 【1944年】

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