「人工元素」の誕生、科学の新地平 ── シーボーグ、プルトニウムの合成に成功

【カリフォルニア州バークレー 2月23日】

人類は本日、自然界の限界を超え、自らの手で新たな物質を創造するという歴史的な一歩を記した。カリフォルニア大学バークレー校のグレン・シーボーグ博士、エドウィン・マクミラン博士らの研究チームは、94番元素であるプルトニウム(238Pu)の世界初となる合成に成功した。これは、昨年の93番元素ネプツニウムの発見に続く快挙であり、周期表の果てを拡張する超ウラン元素の開拓が、物理学および化学の常識を根底から塗り替えようとしている。

今回の成功の背景には、同大学の誇る60インチ・サイクロトロン(加速器)による強力な粒子照射技術がある。研究チームはウラン238に重水素の原子核(デューテロン)を衝突させ、生じた不安定な中間体をベータ崩壊を経て新元素へと変換させることに成功した。この新元素は、太陽系最外縁の惑星冥王星(プルート)にちなみ「プルトニウム」と命名。極めて微量ながらも、化学的特性の特定が可能な形で抽出されたことは、原子核物理学における精密制御の到達点を示すものである。また、この過程で発見された核分裂の可能性を秘めた特異な性質は、エネルギー資源としての巨大な潜在能力を示唆している。

現場となったバークレーの実験室「ギルマン・ホール」307号室は、深夜まで続く実験の熱気と装置の作動音に包まれていた。化学処理を終えたシーボーグ博士が、極微量の沈殿物が放つ放射線をガイガーカウンターで確認した瞬間、張り詰めた沈黙は歓喜の声へと変わった。煤けた白衣を纏った若き研究者たちは、目に見えぬほどの微小なサンプルを前に、宇宙に存在しない物質を現出させたという畏怖に近い感動に打ち震えている。窓の外には静かな夜が広がっているが、この小部屋で生まれた「人工の火」は、人類がかつて経験したことのない巨大な力の胎動を感じさせる。

このプルトニウムの発見が、原子核エネルギーの平和的利用に向けた新たな扉を開くと同時に、世界のエネルギー情勢を劇的に一変させるのではないかとの見方もある。また、この強力な新物質が、現在激化する第二次世界大戦の影で、国家の存亡を賭けた軍事技術への応用を加速させるのではないかとの懸念も囁かれている。科学者が手にしたこの「神の火」が、文明の光となるのか、あるいは破滅の引き金となるのか、その行方が鋭く注目される。

— RekisyNews 科学面 【1941年】

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