「香料諸島」に血の雨 ── アンボイナ事件、英蘭の対立が沸点に

【アンボイナ 2月23日】

東インド諸島の覇権をめぐる香料貿易の拠点、モルッカ諸島のアンボイナ島において本日、凄惨な流血の惨事が発生した。オランダ東インド会社(VOC)の現地当局は、イギリス東インド会社の商館員および日本人傭兵らがオランダ側の要塞を奪取せんとする「謀反」を企てたとして、これらを一斉に検束。首謀者とされるイギリス人10名、日本人傭兵9名、ポルトガル人1名に対し、残酷な拷問の末に死刑を執行した。この「アンボイナ事件」は、東南アジアにおける権益争いを武力で決する非情な転換点として、欧州各国の外交に激震を走らせている。

今回の惨劇の背景には、クローブやナツメグといった高価値な香料の独占を狙う、新興の海洋国家間による凄まじい執念がある。1619年にクーン総督がバタヴィアを建設して以来、オランダ側は独占権の強化を急いでいたが、後発のイギリス側もこれに執拗に食らいついていた。両国は本国間で協定を締結し、平和的な共存を模索していたものの、現地の利害対立はもはや条約という紙切れで制御できる域を超えていたのである。今回の処刑には、東インドにおけるイギリスの影響力を根絶やしにせんとするオランダ側の強い海洋覇権への意志が透けて見える。

現場のビクトリア要塞内では、熱帯の湿った空気の中に硝煙と血の臭いが混じり、異様な緊張感に包まれている。日本人傭兵たちは、異国の地で傭兵としての職務を果たしながらも、あらぬ疑いをかけられ、無慈悲な拷問に晒された末に刑場の露と消えた。処刑台の周辺には、変わり果てた同胞の姿を沈痛な面持ちで見守る現地住民の姿もあり、かつて活気に溢れた商港の賑わいは完全に霧散した。イギリス商館の跡地には静寂が漂う一方で、オランダ側の兵士たちは「これで諸島の秩序は保たれた」と冷淡な口調で語り、厳重な警備を続けている。

この一方的な武力行使が、イギリスの東南アジアからの撤退を加速させ、同国がその拠点をインド亜大陸へと大きくシフトさせる歴史的な契機となるのではないかとの見方もある。また、この事件がもたらした両国間の決定的な溝が、将来的な英蘭戦争の遠因となり、世界貿易の主導権がいかなる大国の手に渡るのかという問いを突きつけている。血塗られた香料諸島の利権を巡る重商主義的な闘争が、いかなる凄惨な結末へと結びつくのか、大航海時代の残照の中でその行方が鋭く注目される。

— RekisyNews 海外面 【1623年】

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