【アルメニア高原・マラズギルト 8月26日】
本日、東ローマ帝国軍がセルジューク朝軍と会戦し、日没前に戦線が崩れて潰走した。帝国軍はロマノス4世自らが督戦、歩兵と重騎兵を中心に前進したが、相手は騎射と偽装退却で間合いを外し、弓の雨で隊列を削った。別働隊の消息不明や連絡の混乱が重なり、側面の空隙を突かれた。
午後、後退の合図が誤って伝わったとの証言もあり、後備隊の離脱で中央が孤立。周囲から半月形に圧され、旗手が倒れると混乱は一気に拡大した。皇帝の近衛も包囲を破れず、主将は敵の手に落ちたとの報が飛び交っている。傭兵の一部が戦意を失い、陣具を放棄して散開した。
帝国の陣地は夜半までに解体し、輜重と天幕は戦利として持ち去られた。セルジューク側は戦場を掌握し、捕虜と戦利品の整理に移ったもよう。皇帝の身柄をめぐっては、講和条件の交渉が始まるとの見方が出ているが、詳細は判然としない。
アナトリア各地の城塞は警戒を強め、都では緊急の使者が走る。兵の欠乏と農村の荒廃が進めば、防衛線の維持は難しくなるとの懸念もある。重装の突撃よりも機動の弓騎が主導した本日の戦いは、戦法の優劣を痛烈に示した。砂塵の向こうで焚き火がゆれる。勝者と敗者を隔てるのは、いまや夜だけだ。
— RekisyNews 国際・戦況面 【1071年】