【大阪 8月25日】
本日、日清食品は世界初のインスタントラーメン『チキンラーメン』の発売を開始した。内容量は85グラム、希望小売価格は35円。乾いた麺を丼に入れ、熱湯を注げばそのまま食べられる“鍋いらず”の新方式で、発売会場では実演の一杯に長い列ができた。試食した主婦は「忙しい夕方に助かる」と笑みを見せ、学生は「夜食にちょうどよい」と語る。
麺は鶏がら風味のスープで味付けしたのち乾燥させたもので、保存が利き、湯戻しだけで香りが立つ。開発陣は「湯をかけるだけで麺とスープが同時に仕上がる配合」を追求し、家庭の火力や湯量のばらつきにも対応できるよう試作を重ねたという。袋を開けて3分待てば、好みで卵やねぎを添えるだけで一杯が完成。屋台の味を台所に移す発想は、戦後の食卓の新しい標準になりそうだ。
発売当初は百貨店・食料品店を中心に展開し、順次量販店へ広げる。軽くて運びやすい包装は備蓄にも向き、災害時の非常食としても注目される見込みである。外食と家庭料理のあいだに位置する“即席めん”という新ジャンルは、流通や家電(電気ポット)にも波及効果を及ぼしそうだ。メーカーは「誰でも同じおいしさにできる再現性」を訴求し、レシピカードの配布や広告展開を準備している。台所の時間を短く、食卓の笑顔はそのままに―新製品が暮らしのリズムを変え始めた。
— RekisyNews 経済・食の面 【1958年】