【西独・ヴォルフスブルク 2月17日】
フォルクスワーゲン社は本日、主力小型車「タイプ1」(通称ビートル)の累計生産台数が1,500万台を突破し、米フォード社「モデルT」が長く保持してきた自動車の量産記録を塗り替えたと発表した。工場では節目となる15,007,034台目が組立ラインを離れ、サイレンとともに従業員が拍手で送り出したという。モデルTは1908年から1927年まで生産され、量産方式の象徴として知られてきたが、その座が入れ替わった。
記録車は明るい塗装に記念章を添えた特別仕様として扱われる見通しで、同社は節目を「世界王者」と呼んで祝う方針だ。工場の門前には報道陣が詰め、寒気の中、出来上がった車体が検査ラインへ移るたびにシャッター音が響いた。現場では「親子二代で同じ車を組む家もある」と語られ、長い生産の重みがにじむ。
タイプ1は戦後の復興期から各国へ輸出され、簡素な構造と整備のしやすさで家庭用の足として普及した。一方で近年は車体の大型化や装備の充実を求める声が強まり、競争は激しい。同社関係者は「数字は通過点。品質と供給を守らねば支持は離れる」と気を引き締め、改良を重ねながら需要をつなぐ構えを示した。
大量生産の象徴だったモデルTを越えた小さな車は、工業国の競い合いの只中で、大衆車の時代がこれからも続くことを静かに示した。同社の次の一手も注目される。
— RekisyNews 経済面 【1972年】
