【東京 2月17日】
坪内逍遙、島村抱月らが中心となり、本日、演劇・文学・美術などの刷新を掲げる新団体「文藝協会」が東京で結成された。早稲田の学界・文壇周辺で続いてきた演劇研究や上演の試みを、より広い文化運動として組み立て直す狙いがあるとみられる。関係者によれば、作品の紹介や試演、研究会の開催、将来の俳優養成なども視野に入れ、従来の座や興行の枠にとらわれない活動を進める方針だという。
結成の知らせは午前中から文士や学生の間に広がり、集会の会場周辺には、寒気の中にも熱を帯びた人だかりができた。討議では、欧州の近代劇や翻訳の扱い、日本語のせりふの整え方、舞台装置や所作の改良などが話題となり、参加者からは「研究と上演を一体にして、時代にふさわしい表現をつくるべきだ」との声が上がった。抱月は、海外で得た知見を演劇の現場に落とし込む意欲を示し、逍遙も、古い型をただ否定するのではなく、学問的検討を踏まえた改革の必要を説いたと伝えられる。
一方で、既存の芝居小屋や一座からは、「理屈が先に立てば観客が離れる」と警戒する向きもある。だが、文学者が舞台に直接関与し、研究と実演を結びつけようとする動きは珍しく、今後の上演のあり方に影響を及ぼす可能性は小さくない。文藝協会が掲げる理想が、机上の議論に終わるのか、新しい舞台の気運として市民の前に形を取るのか、しばらく注目される。
— RekisyNews 文化面 【1906年】
