ヴェスヴィオ山、大噴火 ポンペイとヘルクラネウム埋没の恐れ

 【カンパニア・ヴェスヴィオ山麓 8月24日】

本日正午過ぎ、ヴェスヴィオ山が突如激しく噴き上がり、黒煙と白灰が巨大な松笠状の柱となって天を覆った。轟音と落雷が続き、火山灰と軽石が雨のように降下。街路や屋根は瞬く間に埋まり、家屋の天井が崩落して負傷者が相次いだ。昼なお暗く、松明と灯火なしに歩くことはできない。

山腹では灼熱の雲状流が幾度も走り下り、ヘルクラネウムの海辺では船小屋が炎にのまれたとの報がある。毒性のガスと超高温の風が呼吸を奪い、避難中の人びとが倒れる姿も目撃された。ポンペイでは軽石が層をなし、扉や通りが塞がれ、住民は中庭や地下室に身を寄せて救いを待っている。

ナポリ湾沿岸の都市は非常警報を発し、港では避難民を載せた船が発着を繰り返す。しかし海は逆風と降灰で視界が奪われ、浅瀬では漂流物が舵を阻む。内陸へ逃れる人びとは家財を布に包み、家畜を連れ立って野へ向かった。水路と井戸は灰で詰まり、浴場と市場は閉鎖された。

当局は海岸帯の総避難を命じ、神殿や公会堂に臨時の救護所を設けた。降灰と軽石は一夜で数尺に達する恐れがあり、屋根からの除去と壁の支えを急ぐよう布告が出ている。地震の群発はなお続き、余震と二次災害への警戒が解けない。火の粉が風に乗り、畑と葡萄園の被害も甚大だ。なお、沿岸の駐屯部隊と艦隊は救助と輸送に当たるとし、住民には口鼻を布で覆い、濡らした布で灰を払って身を低く保つよう呼びかけた。市の掲示板には行方不明者の名が書き出され、神殿では祈祷が絶えない。専門家は「噴煙柱の崩落が再び雲状流を生む」と警告し、夜間の移動は極力避けるよう求めている。

— RekisyNews 国際・災害面 【79年】

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