【東京 2月11日】
本日午前、文部大臣・森有礼が東京市内において刺傷を負う事件が発生した。警視庁の発表によれば、森文相は伊勢神宮参拝の際に不敬な態度を取ったと一部で報じられており、これに憤激した国粋主義者の士族・西野文太郎が短刀を用いて襲撃したという。森はただちに医師の手当てを受けたが、容体は重く、予断を許さない状況とされている。
森文相は近年、欧米視察の経験を踏まえ、教育制度の近代化を強く推進してきた人物であり、男女共学の提唱や宗教色を排した教育方針などを巡って、保守的な士族層や神道関係者から激しい反発を受けていた。とくに伊勢神宮参拝時の所作については、詳細が不明なまま「神前に対する無礼」との風説が広がり、各地で批判の声が高まっていた。
事件後、西野はその場で取り押さえられ、取り調べに対し「国家と皇室を汚す者を討った」と供述しているという。政府内では本件を単なる個人犯行にとどまらぬ、思想対立の表出として重く受け止めており、内務当局は警戒を強めている。憲法発布の日に起きたこの凶行は、祝賀一色の世情に暗い影を落とした。
— RekisyNews 政治面 【1889年】