【東京 2月10日】
文部当局は本日、歴史学者 津田左右吉 の著作である『古事記及日本書紀の研究』『神代史の研究』などについて、記紀の内容を批判し、皇室の尊厳を損なうおそれがあるとして、出版・頒布を禁止する処分を決定した。これにより、同氏の一連の研究書は書店から回収され、一般の閲覧が制限されることとなった。
津田氏はこれまで、古代史料を文献批判の立場から検討し、神代に関する叙述について史実性の再検討を試みてきた。これらの研究は学界の一部から高く評価される一方、国体観念との齟齬を指摘する声も強く、近年は当局による監視の対象となっていた。今回の発禁措置は、皇国史観を基礎とする国家的立場から、容認しがたい内容が含まれるとの判断によるものとされる。
学術関係者の間では、研究の自由と国家理念との関係をめぐり、緊張が高まっている。ある大学関係者は「史料批判は学問の根幹であり、政治的判断による制限は学界に大きな影響を及ぼす」と懸念を示した。一方で、世論には「国体を守るためには当然の措置」と受け止める向きも少なくない。
学問と国家の関係が厳しく問われる中、思想・言論をめぐる統制が一段と強まっている現状を象徴する出来事となった。
— RekisyNews 社会面 【1940年】
