【東京・日本武道館 8月24日】
本日夜、ロックバンドTHE ALFEEが日本武道館で初の単独公演を行った。客電が落ちると同時に白幕越しのシルエットが浮かび、割れるような歓声。オープニングから硬質なギターリフと3声コーラスが重なり、アリーナ後方まで一気に熱が駆け抜けた。最新シングル「メリーアン」をはじめ新旧のレパートリーが並び、アコースティックの繊細さと電気の推進力が曲ごとに表情を変える。
高見沢俊彦の速奏と艶やかなトーン、坂崎幸之助の十二弦とハープの色付け、桜井賢の低音コーラスとリズムの骨格―三者三様の個性が噛み合うたび、会場の手拍子は自然に揃った。トラスを巡る照明は曲の展開に同期し、霧の中にレーザーが走る演出も。大音量ながらヴォーカルが際立つミックスで、サビでは観客の大合唱が天井を震わせた。
MCでは「ここに立つのが夢だった。今夜は武道館の屋根を突き破るくらい歌おう」と呼びかけ、バンドはテンポを上げて畳みかける。ミディアムの抒情曲、疾走感のあるロック、フォーク由来のハーモニーと、出自の幅広さが一夜に凝縮。終盤には客席の拍手に合わせてテンポを遊ぶ場面もあり、ライヴバンドとしての柔らかな瞬発力を見せた。
武道館の初登壇は、学園祭や小箱を経て大規模会場へ至る日本のロック・ライヴ文化が成熟段階に入ったことを示す節目でもある。外の特設売り場にはグッズの長い列が夜更けまで続き、追加公演の告知を求める声が方々から上がった。アンコールの拍手は止まず、舞台袖で鳴るクリックが再び始まる。今夜の余韻は、夏の終わりとともに街へ滲み出していく。
— RekisyNews 文化・芸能面 【1983年】