老練の巨匠、最後の笑い ーー ヴェルディ『ファルスタッフ』初演

【ミラノ 2月9日】

本日、ミラノのスカラ座において、作曲家ジュゼッペ・ヴェルディの新作歌劇『ファルスタッフ』が初演された。八十歳を目前にした老巨匠による最新作は、長年悲劇作品で名声を築いてきた作曲家が挑んだ、久方ぶりの喜劇であり、上演前から音楽界の大きな注目を集めていた。

題材はシェイクスピアの戯曲に基づき、虚栄心に満ちた騎士ファルスタッフの滑稽な騒動を描く。幕が上がると、軽妙な管弦楽と緻密に絡み合う合唱、人物の心理を巧みに描き分ける旋律が次々と展開され、客席からは驚きと歓喜の声が上がった。従来の定型的なアリアに頼らず、音楽が絶え間なく流れる構成は、熟達の境地を示すものとして高く評価されている。

終演後、劇場は万雷の拍手に包まれ、作曲家本人が姿を現すと、観客は総立ちとなった。悲劇の大家として知られてきたヴェルディが、人生の晩年に至り、軽やかな笑いと諧謔に満ちた作品を世に送り出したことは、多くの聴衆に深い感慨を与えている。

『ファルスタッフ』は、単なる喜劇にとどまらず、人間の愚かさと愛すべき側面を温かく描き出した作品として、今後も長く語り継がれるであろう。本日の初演は、巨匠の創作人生を締めくくるにふさわしい一夜となった。

— RekisyNews 文化面 【1893年】

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