【東京 2月9日】
太陽系を巡る周期彗星として知られるハレー彗星が、本日、1910年11月30日以来となる地球への最接近を迎えた。世界各地で観測の機会が報じられ、日本でも未明から明け方にかけて、南東の低空に淡い光を放つ姿が確認された。
今回の接近では、彗星は地球から約6,300万キロメートルまで近づいたが、1910年の回帰時に比べて条件は厳しく、肉眼での観測は容易ではなかった。都市部では光害の影響も大きく、双眼鏡や小型望遠鏡を用いて、ようやく尾を引くぼんやりとした天体として捉えられたという。各地の天文台や観測会には多くの市民が集まり、寒空の下で夜明け前の空を見上げた。
ハレー彗星はおよそ76年周期で太陽に接近する彗星で、その存在は古代から記録に残されてきた。前回の回帰時には、彗星の尾に地球が入るとの風説が流れ、社会的な不安を招いたこともあったが、今回は宇宙探査機による接近観測が行われ、彗星の核や噴出物の性質が科学的に詳しく調べられている。専門家は「人類が彗星を本格的に探査する時代の到来を象徴する出来事」と位置づける。
観測条件は今後徐々に悪化し、肉眼での確認は難しくなる見通しだ。次にこの彗星が地球近くに戻るのは21世紀半ばとされており、今回の接近は多くの人にとって生涯一度の天文現象となる。
— RekisyNews 科学面 【1986年】
