【オスロ 8月20日】
昼下がり、覆面の二人組がムンク美術館に押し入り、警備員を威圧して展示室の絵を外し、来館者の悲鳴の中で逃走した。奪われたのは『叫び』と『マドンナ』。館は直ちに閉館し、警察は道路封鎖と検問を開始、港と空港にも警戒が広がった。犯行は数分で終わり、監視カメラの映像と逃走車の目撃談が集められている。
現場には額縁の破片と釘、落下した保護ガラスの破片が散り、壁には白い痕跡が生々しい。来館者の中には恐怖でその場に座り込んだ人もおり、救護員が対応した。文化財犯罪の大胆さに、欧州各地から警備体制の見直しを求める声が上がる。館長は「作品は市民の宝だ」と早期返還を訴え、保険会社は補償と捜索協力の枠組みを協議。
捜査当局は古物商や闇市場の動向を注視し、国境警備隊に作品の特徴を通達。額装の釘穴やキャンバスの織り、顔料の分析データは照合の鍵で、盗品の切断売却を防ぐため、流通経路の封鎖を急ぐ。過去の美術品強奪の手口との照合も始まり、犯行声明の有無が焦点となっている。
市内の広場には花束が置かれ、子どもが画集を抱えて立ち尽くす姿も見られた。絵は単なる市場品ではなく、街の記憶であり、時代の感情を映す鏡だ。空白の壁が語る喪失は大きい。名画の行方は依然不明で、街は不安と憤りに包まれている。市民は「額の中の叫びが街の叫びになった」と語った。美術館は、作品が無傷で戻るまで特別展示を見合わせる。捜査は長期戦の様相だ。
— RekisyNews 文化・事件面 【2004年】