米艇「アメリカ」、ワイト島周回で首位 新機軸の帆走が英艇群を圧倒

【ワイト島沿岸 8月20日】

本日行われた周回レースで、米国のスクーナー「アメリカ」が英艇群を抑え真っ先に帰還した。細身の船型と軽量化、低い抵抗を生む船底線、風位に応じた帆計画の切替が奏功し、微風でも推進力を落とさず、潮流の読みと舵の切り替えが随所で冴えた。桟橋はどよめきに包まれ、造船所筋からは「外洋設計は重厚から合理へ」との声。伝統の装飾や厚重りの艤装に比べ、甲板配置と索具の最適化が際立った。

観覧席ではため息と拍手が交じり、港町は夜更けまで議論に沸いた。対抗艇の水線長やバラスト配分、帆布の織り密度までが酒場で語られ、若い職工は「新しい船が新しい仕事を連れてくる」と目を輝かせる。本日の勝利は海を隔てた技術競争に火をつけ、各造船所は来季へ向けた設計の改訂に入る見込みだ。

折り返し点の潮目では、アメリカ号が一度風を外しながらも素早くタックを切り替え、対抗艇の風を奪う位置取りで差を広げた。艇上では帆桁の調整と人員移動が息を合わせ、甲板には無駄な声が飛ばない。観客の一人は「波の上を滑るというより、海が船を押し上げていた」と驚嘆した。

遊びのレースは、やがて国の威信も背負う舞台になろう。海面に白い軌跡を描いた一隻は、風と水の理を突き詰めた者だけが立てる旗を掲げた。敗れた側もすでに次の設計図を広げている。帆柱を鳴らす風の音が港に残り、潮の匂いはしばらく消えそうにない。今日の一着は、船を作る者と操る者の共同芸術が勝敗を分けることを示した。

— RekisyNews スポーツ・海事面 【1851年】

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