共和暦3年憲法を公布 五人総裁と二院制で新体制発足

【パリ 8月20日】

本日、共和国は「共和暦3年憲法」を公布し、行政府として五人から成る総裁政府、立法府として五百人会と長老会の二院制を整えると発表した。総裁は互いに抑制し合う輪番制で、単独の権力集中を避ける仕掛けが条文の随所に置かれている。選挙は段階制で、有権者が選挙人を選び、選挙人が議員を選出する手順だ。恐怖と混乱の数年を経て、通貨下落と物価騰貴、地方不穏、対外戦の継続がのしかかる中、「秩序」と「自由」を両立させる再出発となる。

当面の急務は財政再建と徴税・公債整理、穀物流通の平準化である。軍の補給と統制の立て直し、地方行政の再建も避けて通れない。市内では「安定こそ第一」と新体制に期待する声と、「革命の理想が事務に埋没する」と警戒する声が交錯し、相場は神経質に上下している。パン屋の行列はなお短くならず、貧民救済の配給所には列が伸びた。議場では地方自治の幅や宗教と国家の関係、新聞発行の自由などをめぐる論戦が続く見通しだ。

憲法は市民の安全保障や人身の自由、財産権の保護をうたいつつ、非常時には治安維持のための特例を残す折衷案でもある。街角のポスターには新秩序の骨子が掲げられ、朗読を聞く群衆の顔には期待と疲労が交じる。処刑台の記憶はまだ生々しく、誰もが「ふり子」を真ん中に戻せるのかを案じている。新体制が法の支配を実務で根づかせられるか、欧州の視線が議場に注がれている。市民の暮らしを測る物差しは、パン一斤の値段にこそ表れる。

— RekisyNews 政治・制度面 【1795年】

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