紀貫之、『土佐日記』の旅に出立 仮名文による新たな記録の試み

【土佐国 1月28日】

土佐国守の任を終えた歌人・紀貫之がこの日、任地を発ち京へ向かう帰途についた。貫之は、国府を出立するにあたり、旅の道中を日記として記すことを周囲に明かしており、その記録は後に『土佐日記』としてまとめられる見通しである。

注目されるのは、日記が仮名文で綴られる点にある。これまで日記や公的記録は漢文による記述が通例であったが、貫之はあえて女性の語り手を仮託し、和歌とともに日常の感情や出来事を仮名で記す構想を示している。これは、和語による文学表現の可能性を大きく広げる試みとして、文人層の関心を集めている。

一行は舟での航行を中心に、風待ちや荒天による停泊を繰り返しながら京を目指す予定で、道中には官人や従者、家族も同行しているという。長期の地方赴任を終え、都へ戻る心情や、旅の不安と期待がどのように描かれるのか、その筆致が注目される。

この旅は単なる帰京の途ではなく、仮名文学の新たな地平を切り開く契機となる可能性を秘めている。貫之の記録が、後世の文学にどのような影響を及ぼすか、今後の展開が待たれる。

— RekisyNews 文化面 【935年】

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次