【東京 8月20日】
本日、東京・大阪・名古屋の放送事業者が統合され、社団法人日本放送協会が正式に発足した。逓信省の認可の下、番組編成と送信設備を一元化し、全国規模で同一内容の放送を届ける体制が始動する。戦後の新設ではなく、各都市で先行していた放送実務を束ねる形での出発である。
協会は営利を目的とせず、聴取契約に基づく受信料を主な財源として運営する方針を表明。広告に依存しないことで、報道・教育・文化の三本柱を安定して提供するという。幹部は「全国の家庭に等しく音声を届ける」と強調した。
番組面では、全国同時のニュースや時間報、学校向け講話、音楽会中継などを計画。地域の演芸・講談・邦楽も積極的に取り上げ、地方色を失わずに全国へ紹介する。緊急時の臨時放送や気象・災害情報の迅速伝達も重要任務に位置づけられた。
技術面では、送信出力の増強と中継網の整備、混信対策の強化を急ぐ。受信機の普及に合わせ、聴取環境を改善するための指導や標準化も進める方針だ。各地の局舎・スタジオは順次更新され、演奏・録音設備の近代化が図られる。
街の電器店には早くも受信機を求める客が列をなし、「家族で正午のニュースを聴きたい」との声が聞かれた。新たに生まれた協会は、都市と地方、官と民、教育と娯楽をつなぐ“声の網”として、日々の暮らしに根づくことを目指す。
日本の放送は今日、分立から統一へ大きく舵を切った。家庭の卓上に置かれた一台の受信機が、国中をひとつの時間で結びはじめている。
— RekisyNews 社会・放送面 【1926年】