【デトロイト 8月20日】
本日、地元紙デトロイト・ニュースが市民向けの常設ラジオ局を開局し、今夜から定時の音声放送を開始する。新聞社が自ら送信設備を備え、広く一般家庭に向けて番組を届ける取り組みは当地で初めてで、商業放送の幕開けとして注目を集めている。
送信機は新聞社社屋内に据え付けられ、屋上にはアンテナが張られた。初日の番組は、編集部員によるニュース朗読と気象情報、地元楽士による演奏で構成。短いジングルの後、呼出しと局名をアナウンスし、一定の時刻に繰り返し電波を送る計画だ。
市内では無線家や電器店が受信装置を用意し、店舗のウィンドウにイヤホンをつないで試聴会を実施。通りには人だかりができ、雑音の向こうから明瞭な声が聞こえると拍手が起きた。学校や工場でも受信機の導入を検討する動きが出ている。
運営は受信料や広告収入に依存せず、まずは新聞社の事業として実施される。とはいえ、商品告知や催事案内、公共の告示を電波で知らせる試みは、商店街や市当局にとって新たな伝達手段となり得る。編集局は「紙面と電波で同じ情報を同時に届ける」と意気込む。
速報性は放送の最大の強みだ。気象急変や交通障害、スポーツ結果、選挙開票といった“動くニュース”を、記者席からほぼ同時に家庭へ伝えられる。遠圏の農場に暮らす家庭でも、時間さえ合わせれば街の出来事を共有できる。
本日の開局は、街の生活を一つの時刻で結ぶ第一歩となるだろう。卓上の受信機から流れる声が、明日からの暮らしの背景音になるか―デトロイトに新しいメディアの夜が訪れた。
— RekisyNews 社会・放送面 【1920年】