【東京 1月20日】
将棋界に衝撃が走った。本日行われた王将戦七番勝負において、挑戦者の升田幸三八段が、名人・大山康晴を相手に自ら香車を引いて指す「香落ち」という異例の手段を選び、見事勝利を収めたのである。
升田は対局開始前、「名人に対して通常の条件では面白くない」として、あえて不利な駒落ちを申し出た。将棋界の最高峰の舞台で、タイトル戦にもかかわらず駒を減らして戦う例は極めて珍しく、関係者や観戦者の間に驚きと戸惑いが広がった。
対局は序盤から升田の独創的な構想が光り、香車を欠いた不利を感じさせない指し回しが続いた。中盤以降は、緻密な読みと大胆な攻めで大山名人を圧倒。終盤では名人の粘りを振り切り、香落ちという条件を覆す完勝となった。
大山名人は終局後、「内容では完敗だった」と率直に認め、升田の将棋観と実力に敬意を示した。升田はかねてより「将棋は芸術であり、勝負は真剣勝負であっても形にとらわれるべきではない」と語っており、今回の決断はその信念を体現したものといえる。
この一局は、勝敗以上に将棋の在り方そのものを問いかける出来事となった。タイトル戦での駒落ち勝利という前例のない結果は、将棋史に長く語り継がれることになりそうだ。
— RekisyNews 文化面 【1956年】
