【東京 1月17日】
大東亜戦争が長期化するなか、政府は本日、戦費捻出を目的としたタバコ価格の大幅な引き上げを実施した。専売品である紙巻きタバコは一斉に値上げされ、なかでも庶民の間で親しまれてきた「金鵄(ゴールデンバット)」は、従来の10銭から15銭へと実に1.5倍の価格改定となった。
物資統制と増税が相次ぐ戦時体制下において、今回の値上げは嗜好品とはいえ市民生活に少なからぬ影響を与えている。工場労働者や兵役帰りの男性の間では、「一服の楽しみさえ遠のいた」との声も聞かれ、街角の小売店では戸惑いの表情が広がった。
一方、この値上げは市民の間で独特の形で受け止められた。皇紀二千六百年を祝して親しまれていた唱歌「紀元二千六百年」の旋律に乗せ、「金鵄あがって十五銭」と歌い替える風刺が自然発生的に広まり、重苦しい戦時の日常の中で、庶民の複雑な感情を映し出している。
政府は「国策遂行のためのやむを得ない措置」と理解を求めているが、相次ぐ負担増に、国民生活の緊張は一層高まりつつある。
— RekisyNews 社会面 【1943年】
